平成16年(ネ)第2179号
独占禁止法違反行為に対する差止請求控訴事件
             控訴人  エアーポートプレスサービス株式会社
             被控訴人 関西国際空港新聞販売株式会社 外5名


平成17年4月15日

 

被控訴人関西国際空港新聞販売株式会社訴訟代理人 
弁 護 士    志   田   至   朗

          被控訴人関西国際空港新聞販売株式会社訴訟復代理人
          弁 護 士    鈴   木   一   洋

大阪高等裁判所第2民事部4係  御 中

準 備 書 面 (2)


第1  被控訴人関空販社が全国紙5紙の販売を行っていないことについて
  被控訴人関空販社が、定款変更後の平成8年7月以降、全国紙5紙の販売を一切行っていないことは、被控訴人関空販社がこれまで繰り返し述べてきたところである。しかるに、控訴人は、「ところが現実には売っているとみざるを得ない。」(控訴人の平成17年3月14日付「準備書面(3)」第3、2)、「『販売』は隠蔽されているといわざるを得ない。」(同第3、4、)等と述べている。しかし、これらは、何の根拠もない単なる憶測にすぎず、控訴人の主張には理由がない。
 控訴人は、原審では、被控訴人関空販社の第7期(平成11年4月1日から平成12年3月31日まで)決算報告書添付の損益計算書(甲13)に、「新聞売上高(1)」及び「新聞売上高(2)」との勘定科目が記載されていることから、被控訴人関空販社が依然として全国紙5紙を販売していると主張していた。これに対しては、既に、被控訴人関空販社が、原審において平成15年8月25日付「準備書面(2)」第1、1において反論したとおりである。念のため繰り返すと、以下のとおりである(乙ア第5号証)。
  被控訴人関空販社は、定款変更後の平成8年7月以降、被控訴人関空販社は、全国紙5紙について即売各社からその仕訳、包装、配送及び代金回収等の業務を受託していたが、取引先各社から、個別に新聞代金の請求がなされるのでは煩雑なので従来どおり被控訴人関空販社名義で一括して請求して欲しい旨の強い要請を受け、これに応じるため、請求窓口を被控訴人関空販社に一本化することとした。
  他方で、被控訴人関空販社としても全国紙5紙につき販売は行わずに配送や代金回収等の受託業務のみを行うようになった以上は、経理上もそれまでの事務処理をコンピューターシステムも含め一括して変更する必要があったが、コンピューターシステムの変更を伴う事務処理の大規模な変更には、人的にもコスト的にも過大な負担が予想され、それを実施するだけの余力に乏しかった。
  そこで、当面の間は従来どおりの経理処理をせざるを得なかったが、しかし、決算上、少なくとも受託業務分とそれ以外の新聞の売上とは明確に区別しておく必要があると思われたことから、顧問税理士にも相談のうえ、平成9年度の第5期決算から、受託業務分については「新聞売上高(1)」及び「新聞仕入高(1)」として計上し、それ以外の売上、即ちスポーツ紙、英字紙、夕刊専門紙、競馬紙については「新聞売上高(2)」及び「新聞仕入高(2)」として計上することとし、業務ごとの収支を決算書上明らかにすることとしたのである。従って、「新聞売上高(1)」とは、上記の理由から、名目上「新聞売上高」として経理処理されることになったものの、実質的には受託業務に係る受託料収入に他ならなかったのである。
  しかし、このような経理処理はあくまでも当面の便宜的なものであったし、いつまでもこのような状態のままでいることが望ましいわけでもないので、この経理処理の変更は社内でも懸案となっていたところ、平成13年10月に被控訴人関空販社の経理処理を含むコンピューターシステムのソフトのリース期間が満了し、平成14年1月からは新システムが本格稼動を始め、事務処理の負担が相当程度に軽減されたこと、平成14年6月には社長が交代したこと等から、平成15年4月をめどに、かねてからの懸案であった経理処理を業務の実態に合ったものに変更することとしたのである。
  こうして、平成15年4月から、受託業務分については「受託料収入」という勘定科目に変更し、従来の「新聞売上高(1)」はすべて「受託料収入」という勘定科目となった。他方、従来の「新聞売上高(2)」は「新聞売上高」という勘定科目となり、これによって、経理処理が業務の実態に合致したものとなったのである。
  従って、経理処理上は「新聞売上高(1)」が、平成15年4月から「受託料収入」に変更になっているものの、これは、経理処理を業務の実態に合わせただけで、実際の業務の内容には何らの変更もなかった。即ち、定款変更後の平成8年7月以降、被控訴人関空販社は、全国紙5紙について販売各社からその仕訳、包装、配送及び代金回収等の業務を受託しているにすぎない。全国紙5紙の販売は、あくまでも、被控訴人株式会社新販、同株式会社大読社、同関西地区新聞即売株式会社、同株式会社近販、同日経大阪即売株式会社の5社がそれぞれ直接に行っているのであって、被控訴人関空販社は一切行っていないのである。
  なお、上記の経緯については、関空販社以外の被控訴人らも、同様の主張をしていることを付言する(被控訴人大読社の平成15年8月25日付「準備書面3」第2、1、同平成16年1月19日付「準備書面6」第1、4、被控訴人近販の平成15年9月1日付「準備書面(2)」第1、1、被控訴人日経大阪即売の平成15年10月29日付「第1準備書面」第2、2)。
  これに対して、控訴人は甲第42号証、甲第43号証、甲第44号証を根拠に、被控訴人関空販社は依然として全国紙5紙を販売していると主張する。
  そこで、まず甲第42号証について述べると、同号証は平成14年4月1日から平成15年3月31日までの間の損益計算書であるところ、控訴人は、被控訴人関空販社が新コンピュータシステムを本格稼動させた平成14年1月から1年3ヶ月が経過した時点で作成された同号証でも「新聞売上高(1)」「新聞仕入高(2)」の記載があるのは、販売の事実を示していると主張する(控訴人の平成17年3月14日付「準備書面(3)」第3、3)。
 しかし、上記のとおり、被控訴人関空販社が経理処理を変更したのは平成15年4月以降のことであるから、それ以前の会計年度に係る甲第42号証が依然として「新聞売上高(1)」「新聞仕入高(1)」といった勘定科目を使用していることは当然である。
  なお、控訴人の主張の趣旨は、新コンピュータシステムが本稼動した平成14年1月の時点又はその後直ちに経理処理を変更しなかったのは不自然であるという点にあるようにも思われるが、被控訴人関空販社が経理処理を変更するに至ったのは、新コンピュータシステムが本格稼動したことだけが理由だったのではない。上記のとおり、新コンピュータシステムの本格稼動によって事務処理の負担が軽減されたことに加え、社長の交代等もあり、この機会にかねてからの懸案であった経理処理を変更しようとの機運が高まり、平成15年4月をめどに実施することとしたのである。また、そもそも会計年度の途中である1月の時点で経理処理の方法を変更したのでは混乱を生じるし、経理処理システムの変更には時間と手間が必要であるから、平成14年1月に新コンピュータシステムが本格稼動したからといって、同年4月に始まる次年度から変更するのでは余裕に乏しい。従って、平成15年4月に始まる会計年度をめどに経理処理を変更したのは極めて合理的であって、何ら不自然な点はない。
  次に、甲第43号証及び甲第44号証につき、控訴人は、両号証を「比較してみれば、関空販社は、平成15年度以降においても、毎月毎に従来どおりの売上実績表を作成して経理処理をしていること、そして決算時だけ損益計算書の中の『受託料収入』欄を設けてそこに相当額を上げているにすぎないものであることと思料される。したがって、平成15年度の関空販社の売上処理は『二重帳簿』方式である。『月次の売上高集計』と『決算時の損益計算書の受託料収入』という2つの経理処理がなされている。
  平成15年度以降について、上記のような取扱の二重性をみるとき、『販売』は隠蔽されているといわざるを得ない。」と主張する(控訴人の平成17年3月14日付「準備書面(3)」第3、4)。
  しかし、甲第43号証の表題が平成14年度上期の「新聞売上実績表」であるのに対し、甲第44号証の表題は平成15年6月度の「取扱金額前年対比表」であり、特に新聞については「売上」という用語を使用せずに「新聞取扱高」記載され、雑誌について「雑誌売上高」と記載されているのとは明らかに異なった扱いをしている。このように、新聞について、平成14年度上期に係る甲第43号証では「売上」という用語が使用されているのに対し、平成15年6月に係る甲第44号証では「取扱高」という用語が使用されているのは、上記のとおり、平成15年4月以降、「新聞売上高(1)」を「受託料収入」と改めたことと平仄が合っており、何らの異とするにあたらない。
  次に、控訴人は、平成15年度以降は、「月次の売上高集計」と「決算時の損益計算書の受託料収入」という2つの経理処理がなされており、二重帳簿であると主張する。しかし、甲第44号証は、被控訴人関空販社の定例取締役会において月次の業務状況を報告するために、全国紙5紙を含めた新聞の取扱高を前年度と比較した資料にすぎず、月次の決算を示すものではない。従って、そこには決算時の勘定科目が記載されているわけではないし、そこにいう「取扱高」には全国紙も全国紙以外の新聞も含まれている。要するに、甲第44号証は、業務状況の報告のために、受託料収入(全国紙)も売上(全国紙以外の新聞)も含めて、新聞の取扱高すべてを単純に前年度と比較しているにすぎないのである。そして、月次決算の資料はそれとは別に存在し、月次の取締役会で報告し、承認を得ている。この月次決算に際しては、銘柄別の取扱高からの全国紙5紙分の取扱金額を抜き出し、これに基づいて受託手数料を計算して月次の経理処理がなされているのである(乙ア第6号証)。従って、二重の経理処理がなされているなどという訴訟人の主張は、全くの憶測以外の何者でもない。
第2  控訴人主張に係る取引の申込について
  控訴人は、「平成6年7月19日、控訴人は、被控訴人各社がそろった共同の場で、取引の申込みを行った。」と主張する。(控訴人の平成17年3月14日付「準備書面(3)」第1、3(2))。
  ところで、控訴人は、原審においても、当初、平成6年7月19日に被控訴人関空販社に対し取引の申込を行った旨の主張をしていた(控訴人の原審における平成15年6月23日付「準備書面(3)」第2、1及び同平成15年9月22日付「準備書面」4(1))。
  そこで、被控訴人関空販社代理人志田至朗が、平成15年12月9日の弁論準備手続において、控訴人代理人に対し、「控訴人は、卸売5社だけではなく関空販社に対しても取引申込をしたと主張する趣旨であるのか否か。」につき確認を求めたところ、控訴人代理人は、「関空販社に取引の申込をした事実はない。」旨の発言をしており、この事実は、被控訴人関空販社が既に原審でも指摘したとおりである(被控訴人関空販社の平成16年1月19日付「準備書面(5)」第1、4。)控訴人代理人の上記発言は、控訴人が被控訴人関空販社に対して取引申込をしたとの主張を撤回したものに他ならず、だからこそ原判決も、事実整理において、卸売5社に対する平成6年1月28日付の書面による取引申込だけを控訴人による取引申込として記載しているのである(原判決「第2 事案の概要」1(4))。
  しかるに、控訴人は、控訴審において、上記のとおり、「平成6年7月19日、控訴人は、被控訴人各社が揃った共同の場で、取引の申込を行った。」と主張するに至った。しかし、控訴人が被控訴人関空販社に対して取引申込をした事実が存在しないということは、原審において控訴人自身が認め、かつ原判決もこれを前提としていた事実なのであって、この問題は既に原審で決着済みの問題なのである。それにもかかわらず、控訴人は、原審で撤回したはずの「平成6年7月19日に関空販社に対して取引の申込を行った。」という主張を今ごろになって持ち出し、決着済みの問題を蒸し返したのである。しかし、それならば、そもそも控訴人は、何故原審において「関空販社に取引の申込をした事実はない。」などという発言をしたのであろうか。控訴人の主張はその場限りのもので一貫性を全く欠いており、理解に苦しむと言わざるを得ない。
  また、今回の控訴人の主張は、厳密に言えば、原審での主張とも異なっている。上記のとおり、控訴人は、原審では、平成6年7月19日に「関空販社に対して」取引の申込を行ったと主張していたのである。しかるに、今回の主張では、「被控訴人各社が揃った共同の場で取引の申込を行った。」と主張している。「被控訴人各社が揃った共同の場で」という以上、控訴人の今回の主張の趣旨は、被控訴人関空販社に対してだけではなく、「関空販社を含む被控訴人ら全員に対して」取引の申込を行ったという点にあると解し得るが、もしそうであるならば、控訴人は、原審において一旦撤回した主張を蒸し返したばかりか、その蒸し返した内容は、原審での主張ともまた異なっており、ますます理解に苦しむ。
  このように、控訴人の主張が常にその場限りのもので、一貫性を全く欠いているという事実自体が、そもそも控訴人の言う取引の申込なるものが存在しなかったことを強く推認させるものである。
  仮に上記の点をおくとしても、そもそも平成6年7月19日に、被控訴人関空販社に対する取引の申込などは一切なかった。被控訴人関空販社が原審においても述べたとおり(被控訴人関空販社の平成15年8月25日付「準備書面(2)」第2、2)、同日頃、当時の被控訴人関空販社の代表取締役らが控訴人の代表取締役らと面談したことはある。しかし、その面談は、控訴人が自己の主張を一方的に述べ立てたのみで、具体的な取引の申込は一切なかった。しかも、被控訴人関空販社は、一般論として、新聞を販売するのであれば、当然その仕入原価を考慮し、他の取引先に対するのと同様の条件になる旨伝えたところ、控訴人からは、それでは話にならないとの発言があり、その後は、控訴人からは一切接触がなかったのである。
  これに対して控訴人は、甲第41号証を根拠に、被控訴人らに取引の申込をしたと主張する。しかし、甲第41号証は、名刺をコピーした紙の余白に記載された手書きのメモにすぎず、到底正式な文書とはいえない上に、そのメモ書き部分は、控訴人の当時の代表取締役が、控訴提起後の平成17年3月10日に記載したものであり、およそ信用性を欠くものである。
  のみならず、控訴人が提出した甲第40号証に添付された被控訴人関空販社の発送に係る平成6年7月11日付の内容証明郵便を見ると、その書き出しの箇所には「貴社は、先般、弊社の出資会社である五社に対して、新聞の仕入、販売の申出をされました。その際前記五社は、貴社に対して、いずれも弊社を貴社仕入の窓口とする旨回答申し上げておりますが、その後貴社からは何らのお申出もなく今日に至っております。」との記載があり、控訴人が被控訴人らのうち卸売5社に対しては取引の申込をしたものの、被控訴人関空販社に対しては何らの申込もなかったことが記されている。また、同内容証明郵便の末尾の箇所には、「同五社からは、貴社が空港島内に設置する即売所で購読者に販売する新聞等については、同五社に代わって取引するよう指示されております。貴社のお申出には、通常の取引として対応させていただく用意がありますので、ご希望があればお申出頂きたいと思います。」と記載されている。これらの記載を見る限り、当時、控訴人から被控訴人関空販社に対しては何らの取引申込もなされていなかったこと、それどころか、むしろ被控訴人関空販社の方から控訴人に対して取引を申し出ていたことが明らかである。そして、平成6年7月11日付で同日発送された内容証明郵便において控訴人に取引の申出をしていた被控訴人関空販社が、そのわずか8日後の同月19日には控訴人に対して取引拒絶をしたなどということはおよそ考えられないことである。このように、甲第40号証に添付された内容証明郵便から見る限り、被控訴人関空販社との取引を拒絶したのではなく、むしろ控訴人の方が被控訴人関空販社との取引を拒絶したことが認めえられるのである。従って、かかる書証を控訴人が提出したことは、控訴人自らが、その主張に理由がないことを自認するに等しいものである。
  また、この点につき控訴人は、「控訴人は、被控訴人卸売5社との取引を望むもので、取引に関空販社が介在することは承知できないものである。」と述べ地得る(控訴人の平成17年3月14日付「準備書面(3)」第1、3(1)、甲40)。これによれば、控訴人は、被控訴人関空販社との取引を望んでいなかったことになる。それにもかかわらず、控訴人が被控訴人関空販社による取引拒絶を主張していることは矛盾という他はなく、これもまた、控訴人自身が、自らの主張に理由がないことを自認するに等しいものである。
  以上によれば、平成6年7月19日に控訴人が被控訴人関空販社に対して取引の申込をしたという事実も、被控訴人関空販社がこれを拒絶したという事実も全く存在しなかったことは明らかなのであって、控訴人の主張には理由がない。

以上