平成16年(ネ)第2179号
独占禁止法違反行為に対する差止請求控訴事件
               控 訴 人    エアポートプレスサービス株式会社
               被控訴人   関西国際空港新聞販売株式会社 外5名

平成17年1月12日



       被控訴人関西国際空港新聞販売株式会社控訴代理人
                          弁 護 士    志 田  至 朗

       被控訴人関西国際空港新聞販売株式会社訴訟復代理人
                          弁 護 士    鈴 木  一 洋

大阪高等裁判所第2民事部4係 御中

答 弁 書

第1  控訴の趣旨に対する答弁
  本件控訴を棄却する。
  控訴費用は控訴人の負担とする。
第2  控訴の理由に対する答弁
 控訴人は、平成16年8月6日付け「控訴理由書」において、概ね以下の3点を主張している。
  第1点は、原判決認定の事実によれば、卸売5社が共同取引拒絶を行ったことは明らかであるとの主張である。
  第2点は、被控訴人日経大阪即売株式会社(以下、「日経大阪即売」という。なお、控訴人は控訴理由書で「日経大阪卸売」と記載しているが、明らかに「日経大阪即売」の誤記と思われる。)が本件各取引拒絶後に設立されたことを理由に本件各取引拒絶を行なっていないとすることは事実誤認であるとの主張である。
  第3点は、独占禁止法第24条の要件である「著しい損害を生じ、又は生ずるおそれ」についての解釈論及び控訴人には著しい損害が認められるとの主張である。
  第2点は、被控訴人関西国際空港新聞販売株式会社(以下原判決に即して「関空販社」という。)に対する主張ではないので答弁しないが、その他の点について以下のとおり反論する。
  控訴人主張の第1点(原判決認定の事実によれば、卸売5社が共同取引拒絶を行なったことは明らかであるとの主張)について
 控訴人が、その控訴理由書において「卸売5社が、共同取引拒絶を行なったことは明らかである」(控訴理由書1、2頁)と述べていることからして、本主張は関空販社以外の被控訴人に関するものと解されるが、念のため控訴人関空販社の主張を述べる(詳細は被控訴人(一審被告)関空販社の平成15年3月31日付け「準備書面」記載のとおりである。)
  まず、原判決が判示するとおり、「一般指定1項は、『自己と競争関係にある他の事業者』と共同してする取引拒絶について規定しているところ、」「被告関空販社は、・・・卸売5社と競争関係にはな」く、「被告関空販社について一般指定1項に基づく共同取引拒絶は成立しない」(原判決第3、3、 、17、18頁)ことが明らかであるから、被控訴人関空販社とそれ以外の被控訴人である卸売5社との間では、およそ独占禁止法上の不公正な取引方法である共同取引拒絶(一般指定1項)が成立する余地はない。
 次に、被控訴人関空販社が控訴人に対して取引拒絶をした事実も存在しない。そもそも、被控訴人関空販社が平成16年1月19日付け「準備書面 」において述べたとおり、控訴人が被控訴人関空販社に対して取引の申込をした事実自体が存在しないのであるから、これを拒絶することもありえない。
  なお、控訴人は、原審において、「卸売5社(但し、被控訴人日経大阪即売については、同社ではなく日経大阪販売開発)は、空港島での全国紙の取引を独占するために被告関空販社を設立し、その利益は卸売5社に還流する。そして、卸売5社はかかる被告関空販社を通じてのみ取引するという形で卸売りを拒絶したのであって、被告関空販社の存在と協働によってのみ協働取引拒絶の実効性が確保されるので、被告関空販社も被告5社と協働して取引を拒絶したといえる。」旨の主張をしたが、この点についても、原判決がその第3、3、 、18頁において判示するとおり、仮に控訴人主張の事実関係が認められたとしても、個別の法人格を有する主体である被控訴人関空販社を卸売5社と同一視して共同取引拒絶の主体と見ることはできないことが明らかであって、控訴人の主張は失当である。
 したがって、本件については、控訴理由書における控訴人の主張を前提としても、被控訴人関空販社に関し、およそ請求原因事実が全く存在しないといわざるを得ない。
 控訴人主張の第3点(独占禁止法第24条の要件である「著しい損害を生じ、又は生ずるおそれ」について控訴人には著しい損害が認められるとの主張)について
  「著しい損害」に関する一般論部分(控訴理由書4項)について控訴人は、谷原修身「独占禁止法と民事的救済制度」(中央経済社)の記載(同書151頁ないし152頁)を引用し、法が「著しい損害」を要件としたのは不適切であるとした上で、同要件は一般条項と理解すべきであると主張する。
  しかし、上記主張は、独占禁止法第24条の立法趣旨に明らかに反するばかりか、文理解釈上も到底採り得ない独自の主張に過ぎない。
 すなわち、独占禁止法第24条が「著しい損害」を要件としたのは、損害賠償請求の場合よりも高度の違法性が認められることを要求する趣旨であり(東出浩一「民事的救済制度の整備に係る独占禁止法の改正」公正取引597号28ないし29頁、「座談会 民事的救済制度の整備について」における山田昭雄発言 公正取引597号16頁、塚田益徳「民事的救済制度の整備にかかる平成12年独占禁止法改正の概要」NBL690号8頁、東出浩一編著「独占禁止法と民事訴訟」社団法人商事法務研究会28頁)、具体的には、著しい損害とは「個々の被害者の損害の質・量において著しいこと」(前掲公正取引597号28頁)を意味するとされている。
 このように高度の違法性を要求しているからこそ、条文の文言上も、通常の損害ではなく「著しい」損害とされているのであり、それはまさに原判決が言うとおり独占禁止法第19条に違反する行為のなかから差止を認める必要がある行為を限定して取り出すための要件なのである。
  したがって、これを一般条項などと解するのは立法趣旨及び文言を完全に無視するものであるといわざるを得ない。
  なお、控訴人は、知的財産権侵害や不正競争防止法においては特段の損害要件が認められていないにもかかわらず独占禁止法違反行為についてのみ「著しい損害」を要件とするのは法体系上の整合性を欠き不適切であると述べる。しかし、知的財産権の場合に著しい損害が要件とされていないのは、知的財産権は権利者に排他的・独占的権利を与える物権的権利であることから、その侵害は当然に高度の違法性が認められるためであり、不正競争防止法において著しい損害が要件とされていないのは、不正競争は悪性の強い行為であり、かつ、営業上の利益に対する侵害が生ずるケースが多いためであると解される(前掲公正取引597号29頁)のであって、何ら法体系上の整合性を欠くものではない。
  そして、本件のような共同取引拒絶の類型において「著しい損害」の要件を満たすような場合の例としては、「例えば、共同の取引拒絶や排他条件付取引のため、事業活動が困難となり、市場に参入することができず、あるいは、市場からの退出を余儀なくされるおそれがある場合などは、『著しい損害』があると認められると考えられる」(前掲公正取引597号29頁。前掲東出編著「独禁法違反と民事訴訟」29頁も同旨。)とされている。
  また、最高裁判所事務総局行政局監修「独占禁止法関係訴訟執務資料」(法曹界)においても、この「著しい損害」について、公正取引委員会の「独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度に関する研究会」の最終報告書を引用しつつ、同報告書の「(『著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがある』ことを差止請求の要件として定めていることの立法趣旨については、)市場から排除されるおそれがある場合や、新規参入が阻止されている場合など、独占禁止法違反によって回復し難い損害が生じる場合には、差止めを認めることが適当であると考えられる」との記載が参考になるとされている(同書4頁)。
  したがって、原判決が、「独禁法24条は、そのうち差止めを認める必要がある行為を限定して取り出すために、『著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるとき』の要件を定めたものと解される。」(第3、5、 、19頁)とした上で、「本件各取引拒絶によって、又は市場に参入できなくなった若しくはそのおそれがあった、又は市場から退出を余儀なくされている若しくはそのおそれがあるなど、本件各取引拒絶を差し止める必要性を基礎づける事情は認められない。」(原判決19頁)としたことは極めて正当というべきであり、控訴人の主張は失当である。

以 上