平成16年(ネ)第2179号 独占禁止法違反行為に対する差止請求訴訟事件

直送済

控 訴 人   エアポートプレスサービス株式会社
被控訴人  株式会社大読社 外5名

答 弁 書

平成17年1月13日

大阪高等裁判所第2民事部4係  御中

            〒100-0014  東京都千代田区永田町2丁目14番2号
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                         被控訴人  株 式 会 社 大 読 社

                         上記被控訴人訴訟代理人
                              弁護士     寺    上    泰    昭
                                〃      岩    下    圭    一
                                〃      宮    川    裕    光
                                〃      佐    藤    水    暁

目 次
第1  控訴の趣旨に対する答弁
第2  控訴の理由に対する答弁
  1  本件各取引拒絶についての共同の有無について
  2  本件各取引拒絶の違法性の有無について
  3  著しい損害の有無について
第3  結論



第1  控訴の趣旨に対する答弁
  本件控訴を棄却する
  控訴費用は控訴人の負担とする
との判決を求める。
第2  控訴の理由に対する答弁
  以下、控訴人提出の平成16年8月6日付け控訴理由書(以下「控訴理由書」という。)における控訴人の主張に対し、原判決において整理されている争点ごとに反論することとする。
  本件各取引拒絶についての共同の有無について
(1)   控訴人は、「この事実(引用者注:控訴理由書、1、(1)ないし(3)、1〜2頁)を前提とすれば、原判決は明言することを避けてはいるものの、卸売5社が、共同取引拒絶を行ったことは明らかである。その理由は、卸売5社の取引拒絶の理由が関空販社の存在を理由とするものであること、そしてその関空販社を設立したのが、卸売5社であることから、卸売5社の共同性に疑問の余地がないからである。」と主張している。
  しかし、控訴人の上記主張は、推論の過程に著しい論理の飛躍があり、原判決の判示内容を曲解するものであるから、失当である。
  結局のところ、控訴人の主張は、原判決の「3 争点に対する当事者の主張」の「(3) 争点(3)(被告関空販社を除く被告らによる本件各取引拒絶についての共同の有無)について」(11頁)に要約されているとおり、「被告関空販社を除く被告らは、共同して本件各取引拒絶を行った。」という結論を述べるだけであって、本件各取引拒絶の共同性についての具体的な主張を全くおこなっていないのである。
(2)   また、控訴人は、「原判決は、被控訴人日経大阪即売(ママ)が本件各取引拒絶後に、設立されたものであり、本件各取引拒絶を行っていないことは明らかであるとする。しかし、被控訴人日経大阪即売は、被控訴人日経大阪即売開発を引継いで、日経新聞を一手に販売する為に設立された会社であり、実質的な経営には何らの変更もなされていないのであるから、被控訴人日経大阪即売がなした控訴人との取引拒絶の方針を引継いでいるものであり、本件差止請求の相手方たる地位を引継いだものとして、差止請求を受ける被告適格があるというべきであって、単に会社の設立時期のみで、同社に対する差止請求を棄却したのは重大なる事実誤認である。」と主張している。
  しかし、本件訴訟において控訴人が共同取引拒絶を行った主体として主張しているのは、あくまでも訴外日経大阪販売開発株式会社なのであるから、その後、訴外日経大阪販売開発株式会社から被控訴人日経大阪即売株式会社へ新聞卸売事業が移管された事実が存在するとしても、個別の法人格を有する主体である被控訴人日経大阪即売株式会社を訴外日経大阪販売開発株式会社と同一視して共同取引拒絶の主体とすることには明らかな論理の飛躍があり、失当である。
  したがって、被控訴人関空販社を除く被控訴人らによる本件各取引拒絶についての共同を否定した原判決は極めて正当であり、事実誤認はない。
  本件各取引拒絶の違法性の有無について
  本件各取引拒絶が共同取引拒絶にあたらないと判断した原判決が正当であることは既に述べたとおりであるが、仮に百歩譲って、控訴人の主張する共同取引拒絶の事実が存在するとしても、被控訴人卸売5社の取引拒絶行為に公正競争阻害性が認められないことは、原審において被控訴人大読社が主張したとおりである(被控訴人大読社の平成16年3月1日付け準備書面7、第2及び第3(4〜6頁))。すなわち、被控訴人卸売5社らから全国紙を仕入れることができなくても、被控訴人卸売5社らから全国紙を仕入れる他の即売業者から容易に全国紙を仕入れることが可能であり、現に、控訴人は、原判決も認定しているとおり、訴外なんばミヤタ株式会社から全国紙を仕入れ、空港島において、航空会社、売店、ラウンジ等に販売しているのであって、およそ事業活動の困難性は存在しないのであるから、被控訴人卸売5社の取引拒絶行為に公正競争阻害性を認めることができないことは明らかである。
  したがって、いずれにしても、控訴人の請求に理由がないことは明らかであるから、控訴人の請求を棄却した原判決は正当であり、本件控訴には理由がない。
  著しい損害の有無について以上
(1)   控訴人は、「原判決は、独禁法第24条の要件である『著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるとき』(以下『著しい損害』という)が定められた理由を、『独禁法によって、保護される個々の事業者又は消費者の法益は、人格権、物権、知的財産権のように絶対権としての保護を受ける法益ではない。また、不正競争防止所定の行為のように、行為類型が具体的ではなく、より包括的な行為要件の定め方がされており、公正競争阻害性という幅のある要件も存在する。すなわち、幅広い行為が独禁法19条に違反する行為として取り上げられる可能性があることから、独禁法24条は、そのうち差止めを認める必要がある行為を限定して取り出すため』としている。 4 しかし、これに対しては学説上、次のような批判がある。」(控訴理由書、3及び4,2〜5頁)と主張し、原判決の示した独占禁止法24条の解釈と相反する学説を縷々引用している。
  しかし、原判決の示した独占禁止法24条の解釈は、独占禁止法の所管官庁であり、同条の制定作業(法案作成)に責任を持つ立場にある公正取引委員会が説明する立法趣旨にしたがった極めて正当な判断である。
  そもそも、控訴人の控訴理由書に記載されている主張は、「独占禁止法違反行為による差止請求権についてのみ『著しい損害』要件が課されていることは、我が国の法体系上の整合性を欠き、不適切である」(控訴理由書、4、4頁)、「第24条に『著しい損害』要件を規定したことの意義が不明である」(控訴理由書、4、4頁)等という法律の解釈論を超えた立法論を展開するものに他ならず、現行法の解釈としては明らかに失当である。
  ちなみに、原判決は、独占禁止法24条の規定する「著しい損害」の要件についての本件事案における具体的な判断を示した結論部分において、「本件全証拠によっても、本件各取引拒絶のよって、原告が市場に参入できなくなった若しくはそのおそれがあった又は市場からの退出を余儀なくされている若しくはそのおそれがあるなど、本件各取引拒絶を差し止める必要性を基礎づける事情は認められない。」(原判決19頁)と判示しているが、この判断は、公正取引委員会の担当官による「実際にどのような場合に『著しい損害』と認められるかは、個別のケースに応じて、裁判所が個々に判断することになる。例えば、共同の取引拒絶や拘束条件付取引、不当廉売のため、事業活動が困難となり、市場に参入することができず、あるいは、市場からの退出を余儀なくされるおそれがある場合などは、『著しい損害』があると認められると考えられる。」(東出浩一編著「独禁法違反と民事訴訟」商亊法務研究会)との解説を踏まえたものであって、極めて正当である。
  以上のとおり、原判決の示した独占禁止法24条の解釈及び本件事案における具体的な判断はいずれも正当であり、公正取引委員会の担当官による解説を不当に蔑ろにし、控訴人独自の見解に基づいて原判決を論難する控訴人の主張は失当である。
(2)   また、控訴人は、「本件共同取引拒絶のよって、控訴人は空港島内における全国紙の販売につき、常に納入打ち切りの不安をかかえたままであり、販路の拡大がはかれないことはもちろんのこと、販路の維持さえ危うい状況にある。この点、原判決や被控訴人らは、控訴人が訴外『なんばミヤタ』から現に全国紙を仕入れているではないかという。しかし、『なんばミヤタ』は控訴人に全国紙を売却していることを理由に、卸売5社から仕入れストップの圧力を受けており(甲第23号証、資料aD14・15)、いつ卸売5社が『なんばミヤタ』に全国紙の卸売を中止するか予断を許さない(ただし、その場合には独占禁止法違反が顕著となって、公正取引委員会から勧告を受ける可能性もある為、卸売5社は躊躇している状態である)。即ち、控訴人は空港島内における全国紙の販売については、いわゆる『ジリ貧』の状況に追い込まれており、いつ撤退してもおかしくない事態に陥っているのである。」(控訴理由書、6、6頁)と主張している。
  しかし、既に被控訴人大読社が原審において平成16年3月1日付け準備書面7で主張立証しているとおり、少なくとも、被控訴人大読社は、訴外株式会社なんばミヤタに対し、読売新聞の再販売先について何らの拘束、制限、妨害等を行っておらず、また、訴外株式会社なんばミヤタが読売新聞を控訴人に卸売りしていることについても何らの拘束、制限、妨害等の行為を行っていないから、控訴人の上記主張は、事実に反していることが明らかであり、およそ理由がない。
  具体的には、控訴人が訴外株式会社なんばミヤタから全国紙5紙の仕入れを開始したと主張している平成6年4月以降、被控訴人大読社の訴外株式会社なんばミヤタに対する読売新聞の供給量は、納品数・実売数共に一貫して増加しており、「『なんばミヤタ』は控訴人に全国紙を売却していることを理由に、卸売5社から仕入れストップの圧力を受けており」という控訴人の主張が、現実を無視した単なる控訴人の空想に過ぎないことは明白である(乙ウ第6号証)。特に、訴外株式会社なんばミヤタを除く即売業者に対する読売新聞の納品数・実売数が、訴外株式会社なんばミヤタに対する読売新聞の納品数・実売数とは対照的に平成6〜7年をピークに毎年減少し、平成15年には平成6年の約二分の一近くにまで減少しており、読売新聞の即売の納品数・実売数が一般的に減少している傾向にある中で、訴外株式会社なんばミヤタに対する供給量だけが大幅に増加していることからすれば、「卸売5社からのこのなんばミヤタへの供給停止の圧力がすさまじい」という控訴人の主張が事実無根であることはより一層明白である(乙ウ第6号証)。
  さらに、被控訴人大読社の訴外株式会社なんばミヤタに対する読売新聞の供給量の推移を詳細に分析・検討すると、平成6年4月時点において、納品数の7,780部に対し、実際の販売数は2,977部に過ぎず、残りの4,803部が返品されており、それ以降も現在に至るまで、常に約3,000部から約10,000部近く返品されている事実が分かるが、この事実は、被控訴人大読社の訴外株式会社なんばミヤタに対する読売新聞の供給には常に十分な余裕があったことを端的に示している(乙ウ第6号証)。
  したがって、控訴人の上記主張は、本件訴訟においておよそ立証されていない「『なんばミヤタ』は控訴人に全国紙を売却していることを理由に、卸売5社から仕入れストップの圧力を受けて」いるとの事実を前提とするものであって、明らかに失当であり、「本件全証拠によっても、本件各取引拒絶によって、原告が市場に参入できなくなった若しくはそのおそれがあった又は市場からの退出を余儀なくされている若しくはそのおそれがあるなど、本件各取引拒絶を差し止める必要性を基礎づける事情は認められない。」(原判決19頁)と判示した原判決は、極めて正当である。
(3)  さらに、控訴人は、「原判決は、控訴人が蒙っている損害について、控訴人が『5パーセントとはいえマージンを得ている』ことを理由に『著しい損害』に当たらないというが、控訴人が蒙っているのは、卸売5社から仕入れることができれば得られるはずの10%のマージンが、『なんばミヤタ』からしか仕入れることができないために、5%のマージンしか得ることができないために、実に得べかりし利益の半分を失っているのであるから、たとえその『額』が少なくとも訴訟人にとっては『著しい損害』であることを看過するものであり、零細企業である控訴人にとって死活問題であることの認識を欠く不当な判決であると断ぜざるを得ない。」と主張している。
  しかし、そもそも、控訴人の上記主張の大前提となっている「卸売5社から仕入れることができれば得られるはずの10%のマージン」という事実は、原審において全く立証されておらず、本件全証拠によって認められないことが明らかであるから、控訴人の上記主張は、何ら証拠に基づかない机上の空論に過ぎず、失当である。このことは、既に原審において被控訴人大読社が平成16年3月1日付け準備書面7(7頁)で指摘したとおり、「卸売5社から仕入れることができれば得られるはずのマージン」についての控訴人の主張に不合理な変遷が見られることも明らかである。すなわち、控訴人は、原告準備書面(7)までは卸売5社の取引拒絶がない場合には卸売5社から全国紙5紙を定価の75%で仕入れることができると主張していたにもかかわらず、原告準備書面(8)から突如として何の説明もなく卸売5社の取引拒絶がない場合には卸売5社から全国紙5紙を定価の70%で仕入れることができると主張を変更したものであり、「卸売5社から仕入れることができれば得られるはずの10%のマージン」という控訴人の主張が何の根拠も伴わない控訴人の単なる希望的観測に過ぎないことは明白である。
(4)   以上のとおり、「著しい損害」の有無に関する控訴人の主張は、いずれも全く理由のないものであるから、仮に本件各取引拒絶が一般指定1項の規定する共同取引拒絶に該当し、その違法状態が現在も解消されていないとしても、本件各取引拒絶のよって、控訴人に「著しい損害」があるものとは認められない。
第3  結論
 以上のとおり、控訴人の被控訴人大読社に対する本訴請求に理由がないことは明らかであるから、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから速やかに棄却されるべきである。

以上