平成14年(ワ)第11188号独禁法違反行為に対する差止請求事件
原 告  エアポートプレスサービス株式会社                                           
被 告  関西国際空港新聞販売株式会社 外5名

準 備 書 面 (4)

平成15年6月30日

大阪地方裁判所第4民事部合議A係 御中

            原告訴訟代理人 弁護士   池   上        徹


                  同     弁護士   岡   野   英   雄


                  同     弁護士   布   施        裕


                  同     弁護士   宮   永   堯   史


                  同     弁護士   宮   野   皓   次

  原告の被告関西国際空港新聞販売株式会社(以下「関空販社」という)に対する請求の原因を以下のとおり変更する。

 いわゆる全国紙といわれるのは,朝日新聞・毎日新聞・読売新聞・産経新聞・日本経済新聞の5紙である。
 ところで,これら全国紙の販売方法には,駅等の店頭で売られる場合と宅配がある。その販売ルートは,各新聞社から卸売会社を通じて店頭販売店へというルート(即売ルート)と各新聞社から宅配店へというルート(宅配ルート)がある。

  全国紙5社は,それぞれ系列の販売店を抱えており,基本的には他社の販売店に自社の新聞を販売することはない(但し,日本経済新聞は複数の系列店がある)。
 

  ところが,新関西国際空港が開港すると決まった際,全国紙5社は自己の系列販売店を通じて,関西空港内での販売を行うという方法はとらずに,卸売5社が共同出資をして,新しい販売会社を設立し,その会社に全国5紙の販売をさせることにした。その結果,被告関空販社が設立されたのである。

  つまり,空港島という島が出現し,従前の新聞販売店が存在しない空白地域が突然生まれたことにより,本来であれば卸売5社または各系列販売店が新規開拓競争を行う場になるはずであったところ,卸売5社が談合の上,競争を避け新しい販売会社を5社共同で設立して,その会社に全国紙の販売を一手に引き受けさせたのである。

  空港島におけるかかる状況は,全国紙5紙のすべてが卸売5社の共同出資によって設立された被告関空販社によって販売されていることになり,いわゆる全国紙5紙は被告関空販社が独占的販売していることになる(前述1・2のように,他の地域では全国紙5紙は各系列店によって販売されている)。すなわち,空港島における全国紙5紙の販売市場においては,独占禁止法が禁止する私的独占行為が行われていることになるのである。

 一方,平成12年5月12日,不公正な取引方法を用いた事業者等に差止請求を行うことができる制度の導入等,民事的救済制度の整備等を内容とする独占禁止法の一部改正が行われた。
  改正後の独占禁止法第24条によれば,独占禁止法第8条第1項第5号又は第19条違反行為による被害者の差止請求権が創設され,これによって著しい損害を受けた又は受ける虞れがある消費者・事業者等は,裁判所に訴訟を提起し,違反行為の差止を請求することができる。

  ところで,ここでいう不公正な取引方法とは,結果としてある市場において私的独占状態を形成または維持するために,事業者等が行う行為の一つであると考えられるが,本件空港島における被告関空販社の設立及び独占的販売状態は,すでに全国紙5紙の販売において私的独占が完了している結果であって,被告関空販社が日々全国紙5紙を販売する行為が,空港島における他の業者の新規参入を阻止または躊躇させているのである。
  改正後の独占禁止法第24条の趣旨が私人に差止請求を行うことを認めたのは,独占禁止法の目的とする公正自由な市場維持の責任を,公正取引委員会のみに押しつけるのではなく,私人にも分担させることにより,よりいっそう独占禁止法違反を抑止しようということにある。

  だとすれば,本件のように私的独占の状況が明らかであれば,それによって被害を受けている原告はその差止(具体的には被告関空販社による全国紙5紙の販売の差止)を求めることができると解すべきである。

  なお,被告らは,被告関空販社が全国紙5紙を販売できなくなれば,原告が空港島において全国紙5紙を独占的に販売することになると主張するようであるが,卸売5社が他の地域と同様に自ら空港島内で自紙の販売行為を行うことは当然可能であるから,結果として原告と卸売5社とが空港島内において販売競争を行うことになり,原告が全国紙5紙の販売を独占することはありえない。