平成14年2月21日号


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ゴジラ映画音楽の生みの親・伊福部昭氏CD化に続き

戦後の邦画界の功労者佐藤勝氏の代表作を上海で録音

日本映画の映画音楽ー名曲の発掘・

復刻に賭ける大阪在住の映画音響学者 八朝  裕樹氏


 日本映画ファンなら「伊福部昭」や「佐藤勝」と聞けば、ああ、あの映画音楽・と画面と共にメロディーが浮かぶはず。

 大阪市在住の映画音響学者・八朝裕樹さん(四一)は、我が国初と言える映画音楽の楽譜を発掘・復刻し、新たに録音し直すという画期的な事を手掛けている。

 八朝さんは昨年行われた「第二回京都映画祭」に参加。JR京都駅で開かれた映画音楽コンサートだった。

 黒澤明監督の全盛期、「用心棒」「天国と地獄」「赤ひげ」などの音楽を担当した佐藤勝氏(平成十一年十二月死去)が名匠・田坂具隆監督とコンビを組んだ「冷飯とおさんとちゃん」(昭和四十年・東映京都)のテーマ曲を復刻したのだ。

 邦画界では、極めて珍しい出来事に映画音楽ファンが大勢詰めかけた。

 「復刻」というが、後にも先にも八朝さんしか手掛けた事はない。邦画は洋画に比べ、フィルムはじめ映画の原資料保存がほとんどないのが現状。外国では、保存しているオリジナルスコアを忠実にレコーディングしCD化。映画音楽ファンに喜ばれている。

 八朝さんは三歳の時、テレビでゴジラ映画の一、二作目を見て感動した。東宝「ゴジラ」(堂二十九年)と翌年の「ゴジラの逆襲」で、伊福部昭、佐藤勝の両氏が音楽を担当したもので、特に伊福部氏に傾倒し、中学生の時には東京の自宅を訪ねたほど。佐藤氏にも同様で、以後親交を深めた。

 かって行われていた{伊丹映画祭}の映画音楽コンサートではプロデューサーも務めた。平成五年には、伊福部作曲・佐藤指揮による「ゴジラ・シンフォニック・コンサート」を企画。両巨匠史上初のジョンイトが実現した。

 八朝さんは独学で作曲法と管弦楽法(オーケストレーション=編曲)を習得。

 それが五年前、一枚のCDとなって結実した。現在発売されている「伊福部昭・映画音楽選集」(発売元・キング)で、自費で上海交響楽団を使って録音したのだ。

 「嬉しかったです。尊敬する伊福部昭先生の映画音楽を録音出来たんですから。一部楽譜がなかったんですが、私が映画の画面を見て改めて採譜しました。数曲は指揮も手掛けました」

 そして、今回は佐藤氏が担当した作品の録音だった。前回と違ったのは譜面がほとんど残っていなかった事。

 さらに、前回はすべて自前だったが、今回は黒澤明研究会の半場茂さんが経費を負担してくれた事だ。

 「遺作となってしまった怏Jあがる揩ネど数曲以外、楽譜はありませんでした。映画を見たり、録音テープを聴いたりして採譜し、今回も上海へ飛びました」

 先ごろ録音されたのは、佐藤氏の代表作ばかり。特に黒澤、田坂、岡本喜八、山本薩夫ら各監督の音楽担当作品を中心に集めた。

 林友声指揮の上海交響楽団演奏による名曲の数々は「ゴジラの逆襲」「冷飯・」はじめ、「隠し砦の三悪人」「赤ひげ」「雨あがる」や「独立愚連隊」「戦争と人間」「ああ野麦峠」。さらにスケール感溢れる「アラスカ物語」や、佐藤氏の故郷・北海道留萌市をテーマにした交響曲「留萌の海へ」。

 遺作となった「雨あがる」(平成十二年)のラストシーン。浪人夫婦が旅立つ場面に流れた音楽だが、当時の録音作業中、一部分を画面に合わせてカット。今回は譜面通りに録音したという。

 また、歌手である佐藤氏夫人・千恵子さんが歌う「道行」(菅原洋一)「一本の鉛筆」(美空ひばり)も特別収録している。CD化を目指しているが、現在未定。

 八朝さん「伊福部先生は映画音楽に正攻法の管弦楽を取り入れ、佐藤先生は管弦楽の大衆化運動のために映画音楽に取り組まれた。日本ではかっての名作、しかも映画音楽を復刻・録音するなんて誰もした事がありませんでした。これからも大阪を拠点に活動していきたい」と抱負を語った。

 これからも、日本映画の映画音楽発掘・復刻に取り組んでもらいたいものだ。

発行所:大阪ジャーナル