平成17年3月1日号
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 ものづくり技能伝承と技能人材育成方策
   『調査研究報告』の結果、緊急の認識深まる 近畿経産局

 近畿経済産業局は、近畿地域における企業の技術認識及び技能伝承の実態、さらに行政などの支援の在り方について把握・検討するため、「近畿地域におけるものづくり技能伝承と技能人材育成方策に関する調査研究」を実施、報告書をまとめた。
 わが国製造業の強みは、ものづくり技術の根幹にある蓄積された技能。また、新技術の創出や製品化においても、技能の果たす役割は大きいウエートを占める。しかし、ものづくり企業に取っては団塊の世代の定年退職が始まる2007年問題や、若年者のものづくり現場への就職減、定着率の悪さ、さらには多品種少量生産への対応など、企業経営の状況変化が加速しており、技能伝承を緊急の課題との認識が強い。
  今回の調査報告書は、ものづくり技能とその伝承の必要性や、技能伝承と技能人材育成の現状・課題・方向ーなどアンケート及びヒアリングで掘り下げており、▽早急な技能伝承の取り組みが必要▽効率的な人材育成システムの構築が求められる▽企業における技能経営の確立が重要▽行政なども積極的に支援するーとしている。
 報告書の主なポイントを見るとー
【技能伝承の取り組み】
 「ものづくり技能は必要」と認識している企業(211社)のうち、約3分の1が「技能伝承は2年以内に取り組まなければならない課題」と認識。特に従業員規模30人以下の企業では、より早急な取り組みが必要性を感じている。
 これは同30人以下の企業では経験豊富な技術系職員が高齢化しているだけでなく、企業内で熟練した技能を保持者と認知されている「高度熟練技能者」の50歳台の割合が高いことに起因。特に10人以下の小規模企業の68・9%が、高度熟練者のすべてが50歳以上と、その傾向が顕著。今後、団塊の世代が定年退職を迎える、いわゆる2007年問題に特に危機感を覚えている。
【効率的な人材システム】
 今後とも伝承する手法としては、能力評価や処遇と関連づけているOJTや社内研修会などが主体となるが、企業として今後最も力を入れたい取り組みは「これら技能レベルの評価制度の導入、能力に応じた処遇の充実」であり、そのためには効率的な人材育成システムの構築が必要不可欠。
【技能経営の確立】
 企業経営に際し、「ものづくり技能は企業の財産であり、技能を活用して利益を生みだす」という認識を持ち、その技能≠積極的に経営戦略に活用するという「技能経営」(MOS Manajemementofskill)の方針を明確化することが重要。
 そのため、自社の強みとなる技能≠把握し、伝承するシステムの構築・実行、その効果を評価するという、一連のサイクルを意識した取り組みとすることが必要。
【行政なども積極支援】
 平成17年度から産業育成に向け、資金援助については「人材投資促進減税」の創設、ものづくり啓発では、「小中高におけるキャリア教育」の推進、「ものづくり日本大賞」(総理大臣)の表彰、「製造現場における中核人材の育成・強化」など産業人材育成の施策を実施(30ー35カ所)。
 さらに全国唯一のNPO法人・地域基盤技術継承プラザ(東大阪市)のような地域に根差した取り組みが有用。このプラザは平成16年7月、東大阪商工会議所メンバー企業20社が中心になり設立。企業への高度熟練技能者の派遣などOJTによる指導援助、社員教育の計画づくりへの行政機関もその活動を支えていくことが必要である。
【3月15日、技能伝承シンポジウム】
 技能伝承と技能の人材育成の重要性と先進的な取り組み事例を紹介するとともに、課題や対応方策を明かにする、「技能伝承シンポジウムー戦略的な技能伝承による競争力強化にむけてー」が3月15日、大阪市中央区のエル・おおさか南館南ホール(大阪府立労働センター)で開かれる。
 事例紹介の1つは、「松下電器産業の技能人材育成への取り組み」について。清水剛・松下電器工科短期大学校校長が、「企業経営の要諦は人づくり」の理念のもと、松下電器産業のものづくり系社員に対する人材育成の体系及び活動を紹介し、技能人材育成のポイントを示唆する。
 2つは、「『匠の技』と中小企業の事業戦略」について。横田吉男・山岡製作所製造部部長が同社の超精密金型製造の長年の経験から、中小企業の「ものづくり人材育成」の諸問題と、精密金型技能などの伝承のスピードアップを図る社内教育体制や「マンパワーアップ活動」を紹介し、取り組み方途などを示唆する。
 この後、「ものづくり技能の伝承と技能人材育成の在り方」と題し、大槻真一・阪南大学学長をコーディネーターに、パネルディスカッションを行う。
 パネリストは、▽石崎義公・地域基盤技術継承プラザ理事長▽中農康久・中農製作所社長▽小畠耕二・奈良工業高等専門学校機械工学科教授(産学交流室室長)▽中谷靖彦・大阪府商工労働部能力開発課参事▽吉田正一・近畿経済産業局総務企画部長の諸氏。
 問い合わせは、近畿経済産業局総務企画部企画課(電話06・6966・6003)へ。

発行所:大阪ジャーナル